コワイガク(本当は怖い家庭の医学のウチ的略称)


・プレイバックto補足コワイガク

参考資料…小学館「ホームメディカ 家庭医学館」
     時事通信社「家庭の医学」


今回は、2週分お送りします^^;


・05年5月10日放送
本当は怖い声のかすれ―――胸部大動脈瘤
横隔膜より上にある大動脈にできる動脈瘤のことで、上行・弓部・下行及び胸腹部に区別される。発生箇所によって、治療法や症状が異なるので、どの場所に動脈瘤があるか、が重要になるのである。原因の多くは加齢による動脈硬化で、他には梅毒によるもの、炎症性のもの、外傷によるものなどがある。炎症性のものは、【脈なし病】と同じ原因とされており、女性に多く、眼症状を伴うことがある。


今回のケースにおける発病までの経緯
・40年近く、毎日2箱のタバコを吸い続けてきた結果、胸部大動脈で徐々に動脈硬化が進行。血管が脆くなる

・血管の壁を、心臓から送り出された血液が、高血圧の勢いも加わって激しく圧迫。長い時間をかけ、胸部大動脈の一部を膨らませていく

・大きくなった胸部大動脈瘤が声帯の神経を圧迫。結果、声帯が麻痺してしまったことで声が出にくくなり、唾液などがうまく飲み込めず咳き込む(声のかすれ・咳き込み)

動脈瘤が食道を圧迫(嚥下障害)

動脈瘤が破れかけ、すぐ隣にある肺の中に血液がじわじわと染み出る(血痰が出る)

・この時、すでにY・Sさんの大動脈瘤は、いつ破裂してもおかしくない状態に

・病院へ行こうとしたとき、絶妙(?)のタイミングで健康診断の結果が届く。結果は、大きな異常はなし

・お酒を飲んで血圧が上がった体のまま、カラオケを開始。クライマックスで全身に力をこめた瞬間、極限まで膨れあがっていた胸部大動脈瘤が破裂。致命的な大出血を引き起こし、倒れてしまう

・病院へ搬送されるが、死亡


胸部大動脈瘤の罹病率は、60代以上の男性が多く、毎年1000人近い命を奪っている。その予備軍は、実に8万人に達すると考えられている。いったん胸部大動脈瘤が破裂してしまうと、その生存率はわずか25%。それはまさに「見えない時限爆弾」なのである。


【脈なし病】
大動脈炎症候群(だいどうみゃくえん・しょうこうぐん)、高安動脈炎(たかやす・どうみゃくえん)とも云われているこの病気は、動脈の壁が慢性的に厚くなり、血管の内側が細くなって血流が悪くなる病気。動脈の壁が膨らみ、動脈瘤が出来る場合も一部見られる。
炎症が起きる箇所は大型の動脈に限られており、大動脈や脳や腎臓などの臓器に至るまでの主分枝に見られるが、手足や内臓内部の小さな動脈には見られない(但し、肺動脈に限っては中・小動脈にも見られる)。
何故炎症が起きるかは判っていないが、罹病率は15〜20歳の若い人に多く、男女別では女性の罹病率は男性の約8倍も多く見られる。また、日本人を含め、東洋人にも多く見られ
る。

・症状
発病初期では、動脈炎に伴う発熱や貧血など。進行すると、血行障害が起こり、動悸・目まい・疲れやすいなどの症状が出る。炎症は動脈に一様に出るのではなく、部分的に起こり、起こる部位も患者によって異なる。このため、同じ病気でも血行障害が起きている部位によって症状は様々。

頸部動脈の血行障害:目が霞む、耳鳴りなど。重篤化で視力低下、最悪の場合は失明も。
手に行く動脈の血行障害:手が冷たくなる、仕事をすると手が疲れやすいなど。強い障害が起こることはないので、日常生活には支障をきたすことはない。
腎動脈の血行障害:重度の高血圧。若い人でも脳出血を起こすことも。
腸に行く動脈の血行障害:一時的な下痢、体重の減少など。
心臓の血行障害:大動脈弁の障害で、弁膜症。軽度の場合が多い。冠動脈の障害で、狭心症心筋梗塞など。
肺動脈の血行障害:一時的に咳や痰。まれに慢性の呼吸不全に陥ることも。

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本当は怖い息切れ―――急性膵炎
膵臓に急性の炎症が起こる病気で、膵臓で作られる不活性型の消化酵素が、何らかのきっかけで活性化、膵臓自身を消化してしまい、その結果として様々な病態が起こる状態を差す。
軽症の場合は軽い腹痛だけですむが、重症の場合は血圧の低下やショック状態などを来たし、肺や腎臓などの諸臓器も冒され致命的な状態にもなる重篤な病気である。
急性膵炎の原因として、アルコールの多飲や胆石が主となっていて、うち4分の1が原因不明である。今回のケースは、その胆石によって急性膵炎が引き起こされている。


今回のケースにおける発病までの経緯
・もともと高コレステロールの食事ばかりをとっていたために、そのコレステロールが固まって胆石が作られる

・食事の後、脂肪分を分解する胆汁を出すため、胆のうが収縮。その狭くなった部分に胆石が挟まる(胃の痛みを感じる)

・胆のうの痛みが放散痛となって現れる(右の肩凝り)

・脂っこい食事をさけたことで、胆のうは激しく収縮することもなくなり、痛みが現れないようになる。そのため、胆石がなくなっていないにも関わらず、すっかり良くなったと勘違いしてしまう

・再び脂っこい食事を行う。すると、胆のうは大量の脂肪分を分解しようと激しく収縮。すると胆石は、ついに胆のうの外へと押し出され、そのまま膵液と胆汁が合流する管をふさいでしまった。こうして膵液や胆汁までもが逆流し、膵臓を腫れ上がらす急性膵炎を発病。

・病院へ搬送。一命を取り留めるが、現在もなお絶食療法を継続。


現在、成人の10人から20人に1人が、胆石を持っていると言われている。小さければ持っていても大丈夫と思われがちな胆石だが、実は小さい石ほど流れやすく、いつ膵炎を引き起こすかわからない危険をはらんでいるのである。


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・5月17日放送「女性が気をつける病気SP」
本当は怖い食欲―――バセドウ病
バセドウ病の由来は、ドイツの開業医バセドウ氏と、アイルランドの内科医グレーブス氏によって、相次いで報告されたため、バセドウ病ないしは「グレーブス病」と呼ばれている。甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのう・こうしんしょう)の代表的な症状であるこの病は、免疫異常によって血液中に甲状腺を刺激する物質が、抗体としてたくさん出来てしまい、それが甲状腺の働きを活発にするために、ホルモンが過剰分泌されるのだ。
バセドウ病の代表的な症状として、甲状腺が腫れて大きくなる「甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)」、脈が速くなる「頻脈」、そして眼球が前方に突出する「眼球突出」の3つで、これらの症状を「メルセブルグの3主徴」という。他に、汗をかきやすい、食欲旺盛なのに体重が減る、神経過敏になり精神的に不安定になる、といった症状もある。また、甲状腺機能亢進症の状態が続くと、【合併症】を伴うことがあるという。


今回のケースにおける発病までの経緯
・初めての出産、一人きりでの子育てが大きなストレスとなり、発病に何らかの影響を与えてしまう

・脳や心臓など全身の臓器の機能は、常に全力疾走をしている状態になる(食欲旺盛)

・いくら食べても次々にエネルギーとして消費してしまうため、身体がエネルギー不足の状態に陥ってしまう(ぐったりと疲れる・体重の減少)

・興奮状態が続き、神経過敏になる(睡眠障害・イライラ)

・患者の心臓は常に酷使され、全力疾走の状態でフル回転、限界寸前に

・急に走り出したため、患者の心臓は空回りを始め、血液を送り出すことが出来なくなってしまう

・病院へ搬送。バセドウ病と判明


バセドウ病の罹病率は、多くが20代から40代の女性。成人女性の300人に1人はいると言われ、その数は男性の5倍にものぼる。バセドウ病は、この甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、全身に様々な障害を引き起こすため、病気だとは気づかずに長い間放っておき、死に至るケースもあるという。


甲状腺機能亢進症の合併症】
バセドウクリーゼ
甲状腺クリーゼともいわれ、バセドウ病の症状が悪化すると共に、発熱や悪心、嘔吐、精神不安、不眠などが起こり、興奮状態に陥るもの。意識障害を起こして死亡することもある。

甲状腺中毒性(こうじょうせん・ちゅうどくせい)ミオパチー
筋肉の著しい萎縮や低下が起こる病気。四肢の近位筋(肩や股の関節近くの筋肉)に多く見られる。罹病率は中年男性に多いが、バセドウ病の治療と共に軽快し、治る。

甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(こうじょうせんちゅうどくせい・しゅうきせい・ししまひ)
周期的に四肢が麻痺を起こす病気。夕食後に麻痺が起きることが多く、過食を避けることで予防できる。罹病率は男性が大部分を占め、日中米在住の東洋人に多く見られる。

・その他
悪性の眼球突出症や、重症筋無力症(じゅうしょう・きんむりょくしょう:)などが起こることも。

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本当は怖い生理不順―――乳癌/子宮体癌
子宮体癌とは子宮の奥、子宮体部に出来る癌をいい、日本では最近増加傾向にある病気。かたや乳癌は、乳房に出来る悪性腫瘍のこと。乳癌の90%は乳管から発生する乳管癌で、他にも腺胞(せんほう)から発生する小葉癌、乳頭に発生するパジェット病がある。今回のケースでは、子宮体癌と乳癌、この2つの癌が同時に発症、つまり「重複癌」と呼ばれる病気に罹ったのだ。今回の場合、乳癌の発症こそが子宮体癌を知らせる最終警告だった。


今回のケースにおける発病までの経緯
・脂肪細胞から女性ホルモンが常時、分泌

・子宮は過剰なホルモンにさらされ続け、ついには癌が発生

子宮体癌を知らせるサインとして、生理が長引いたり、早くなったり、短い生理が続くなどの生理不順や不正出血が発生。しかし、更年期障害と勘違いし放置

・体内では癌がみるみる成長。新たな異変として、乳癌を発症

・病院で診察、乳癌・子宮体癌の重複癌と診断。早速、摘出手術を受ける

・術後良好


罹病率は、50代の女性が一番多い子宮体癌。現在、女性の肥満が増える中、子宮体癌は20年前の3倍以上、乳癌も2倍以上に増加。と同時に、重複癌の症例も年々増えてきているのである。

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ネクストカルテ―――「空腹感」「足の痒み」
前者は糖尿病と関係する病気だと思ってるんですが。