コワイガク(本当は怖い家庭の医学のウチ的略称)

・プレイバックto補足コワイガク
・2月15日放送〜本当は怖い花粉症SP

●そもそも、花粉症とは何か?
主に裸子植物の花のおしべに出来る花粉が、風に乗って鼻や目に入り、アレルギー症状を起こす病気の事を差す。花粉症には大きく分けて2つあり、樹木による花粉と、草花による花粉があり、開花期になると、患者は特定のくしゃみ等の症状を起こす。
日本に多い杉花粉は、東北以西に多く見られ、北海道ではイネ科植物の花粉による花粉症が多く見られている。日本における主な花粉飛散と時期については下記の通り。

・スギ:2〜4月
・ヒノキ:3〜5月中旬頃
・カモガヤ:4〜7月
・チモシー:4〜7月、10月頃
・ブタクサ:8〜9月頃
ヨモギ:10〜11月
・カナムグラ:9〜10月中旬頃

上記の植物の他に、ある地域特有のヤシャブシ、カンバといった植物の花粉によるものや、果実・観賞用の花によるものもある。


・ケース1:合併症を引き起こす危険レベル―――気管支喘息
喘息とは、気管支の痙攣や、分泌物(痰)が増加したために肺への空気の出入りが悪くなる病気を差す。日本では1年間でおよそ4千人が死亡しているこの病気。しかも喘息患者のうち、3割以上が花粉症との合併症だと言われているのだ。
実はこの2つの病には、大きな因果関係がある。花粉症にはアレルギー反応に応じ、クラス0〜6までの段階があり、それぞれのクラスは花粉に反応する抗体の量によって分けられている。クラスが6にいけばいくほど、条件によって喘息を起こしやすくなると言われており、患者は抗体の量が多い「クラス5」に属していた。

今回のケースにおける発症までの経緯
|大量のスギ花粉が飛散
|マスクを外して仕事を続けてしまったため、ひどい鼻づまりを起こす
|口で息をする
|大量の杉花粉のかけらが気管支に侵入し、粘膜に付着
|気管支もまた、鼻や目の粘膜と同じように、アレルギー反応を起こし収縮
|鼻や喉で起きていた炎症が気管支へと広がる。そのため気管支はさらに収縮
|空気の通り道が悪くなり、肺に取り込める酸素の量が減少(息切れ)
|気管支が炎症を起こすことで、粘膜から大量の痰が分泌
|呼吸の妨げになるこの痰を取り除こうと、咳が止まらなくなる
|運命の朝、マスクもつけず、坂道を駆け上がる
|激しい運動をしたため、大量の杉花粉が冷たく乾いた空気と共に、一気に気管支に流れ込む
|激しい喘息の発作を引き起こし、患者は呼吸困難に
気管支喘息と診断


スギ花粉症と喘息が、同じ原因で発症することがわかったのは、ごく最近のこと。命の危険を避けるためには、自分が「スギ花粉アレルギー」の、どのクラスにあるかを知ることが大切である。


・ケース2:花粉症を起こす花粉の種類―――アナフィラキシーショック
Ⅰ型アレルギー反応(IgE抗体よって速やかに起こるため、即時型反応とも云われている。
この反応の代表例は、気管支喘息アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・薬剤ショックなど)によって起こる劇症型の症状を差す。全身的な症状が短期間で起こるのが特徴で、呼吸困難や血圧低下で死を招くことさえあるという。
アナフィラキシーショックを起こす原因物質の一つに、花粉があるのだ。そもそも花粉症を引き起こすのは、有名な杉花粉をはじめ、イネ科などその数は50種類以上に及ぶ。患者を悩ませていた杉花粉は、アナフィラキシーショックの原因ではなかったのだ。(杉花粉でアナフィラキシーショックを起こすことは殆どない)犯人は庭に咲いたあのマーガレットの花。
マーガレットはキク科の花で、患者のアナフィラキシーショックはキク科の花粉が原因。彼女はスギ花粉症であると同時に、キク花粉症を発症していたのだ。


今回のケースにおける発症までの経緯
|スギ花粉症を発症、それと同時にキク花粉症も発症
|マーガレットの花を見ようと近づいた時、花粉が目の粘膜に付着(目の痒み)
|母親がガーベラを持参
|ガーベラの花粉が皮膚に付着し、アレルギー反応を起こす(首の痒み)
|その後も、スギ花粉を避けようと密閉した部屋の中で、ガーベラの花粉と接触
|スギ花粉が終わったからと庭に布団を干す
|そのため、すぐそばに咲いていたマーガレットの花粉が布団の表面に大量に付着
|キク花粉が大量に付着した布団に包まれ、大量のキク花粉を吸い込む
|体内に侵入したキク花粉の一部は、一気に気管支から肺に到達
|抗体は激しいアレルギー反応を起こし、ヒスタミンなどの化学物質を放出
|肺が炎症を起こし腫れ上がる
|花粉が付着した眼球でも激しいアレルギー反応が起こる
|血圧の急激な低下と共に神経が異常をきたす(急に目の前が暗くなる)
|意識を失う
アナフィラキシーショックと診断


スギ花粉症が発症した時に、病院で血液検査を受けていれば、キク花粉アレルギーだということが簡単にわかったはず…。キク科やイネ科の花粉は、アナフィラキシーショックを起こすことがあるので特に注意が必要。
スギ花粉アレルギーを持っている人は、キク花粉を初め、複数の花粉アレルギーを持っている可能性が高いのである。


・ケース3:危険な鼻詰まり―――上顎洞癌
いわゆる鼻の癌は、正確には鼻副鼻腔癌(びふくびくうがん)といい、数ある鼻の癌の中で頻度の高い癌が、この上顎洞癌である。蓄膿(ちくのう)症(慢性副鼻腔炎)が続いていることが上顎洞癌発症の原因として考えられている。
現在、この病気を発症する人は年間およそ1000人。中でも多いのが50代以上の男性。そして花粉症の時期に症状が出た場合、花粉症と勘違いしてしまう可能性がある病なのだ。今回のケースでは、発症原因として、埃が考えられていた。


今回のケースにおける発症までの経緯
|作業場で毎日埃を吸い続けたことで、上顎洞の粘膜を覆う線毛細胞が傷つき、炎症が起こる
|タバコの刺激で上顎洞の炎症は、次第に慢性化、ついには細胞が癌化
|2センチほどに成長した癌が、左側の鼻腔を圧迫(左側の鼻だけ詰まる)
|癌細胞の一部が腐り始めることで、悪臭をともなった膿として排出
|不運にも患者は、自分を花粉症だと思い込んでしまい、放置
|4センチほどに成長した癌が、上顎洞の上の方へと進行し、涙管を圧迫(片方だけ涙目)
|癌が今度は上だけでなく、下の方にも増殖。歯の神経を刺激(歯痛)
|癌細胞は日に日に増殖を続け、ついに頬の骨を突き破る(左頬の異常な腫れ)
|病院に運び込まれた時、上顎洞癌はなんと6センチにも成長
|癌は眼球の奥から脳へと進行
|癌細胞からの出血が頭蓋骨の内側に広がり、その結果、脳を圧迫
↓上顎洞癌により、2ヶ月後に死亡


上顎洞癌の最も恐ろしい所は、癌が出来てもしばらくは何の症状も出ないこと。これは癌が何もない空洞の中で成長するため。また、花粉症との大きな違いは、症状の表れ方。花粉症は両方の鼻が詰まるのに対し、上顎洞癌の鼻づまりは、必ずどちらか片方だけ。黄色く粘ついた鼻水に血が混じる、という症状が出た段階で、耳鼻科に行き、CTやMRIなどの検査をしていれば、癌を早期に発見することができたはず…。不運にも、これを花粉症だと思い込んだ患者。鼻づまりや涙目といった何気ない症状を、花粉症だと思い込んでしまったがための悲劇だった。




ネクストカルテ―――「本当は怖い生理痛」「本当は怖い肌の痒み」
女性が気をつける病気SPです。

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