問題進展か軍事緊迫化か、日本の運命は天秤と同然

拉致問題を主因とする経済制裁について、先日の産経新聞にてこういう記事が掲載されていた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050129-00000000-san-pol

自民党が先にまとめた五段階の経済制裁シミュレーションをお浚いすると―――

(1)人道支援の凍結・延期
(2)送金などの報告義務と輸出届け出義務の厳格化
(3)特定品目の貿易停止、特定の送金などの禁止
(4)特定船舶の入港禁止、貿易や送金などの全面禁止
(5)船舶の全面入港禁止

つまり、段階的にLvを引き上げていく「リビア式」ではなく、いきなりレベル4・5での制裁を行おうというものだ。北朝鮮籍船舶の入港禁止に関しては昨年3月に法案が成立しているだけに、Lv4・5での発動は大いに効果が絶大、との見方が支配的である。
しかし、これまでの動向を見ると、いくつもの懸念が払拭できないでいる。
ウチ自身が何故懐疑的にならざるを得ないか、その理由を一通り纏めてみると―――

・感情的になりすぎている
・完全に、とはいえないが、明らかにイエスマン方針になっている
北朝鮮への怨恨で物事を動かしているのではないか、という感が払拭できない
・制裁を行った際のリスク・デメリットに関して全く議論がなされていない
北朝鮮の「誠意」を受け入れる気が全く無い
・安部氏の暴走を懸念
イラク問題におけるアメリカと同じ轍を踏みそう

この7つである。制裁論が始まってからというもの、ウチ自身は何度も今現在の北朝鮮ニトログリセリン同然の状態で、小規模の刺激でさえも命取りだ、と何度も言ってきた。制裁を行うからには、今後の全ての結果をも見通した上での、覚悟の上の判断か、と釘を刺していったが、これらの動向を見る限り、上記の懸念を払拭できないでいる。
そして何より、北朝鮮は以前に「経済制裁は宣戦布告と見なす」と表明をしている。遺骨問題における同国の姿勢が強行突破に終始する、との見方である以上、そろそろ経済制裁に対する何かしらの意趣返しを含め、暴発の危険性を孕み始めた、とするのが妥当ではなかろうか?更にいえば、「経済制裁は宣戦布告と見なす」はハッタリではないことの現われとして捉えることも可能だ。
更に言えば、近隣諸国のご機嫌取りも行わなくてはならないような事態にも直面するのではないか―――というのも、北朝鮮では国を脱出して他国へ逃亡する人が後を絶たないと聞く。
制裁を原因に彼等が爆発的に増えようものなら、近隣諸国の猛反発は避けられない。国際社会に協力を求めようにも、拉致問題における各国の印象が浅いのが実情だ。
今後、拉致問題における一挙手一投足次第で、国際社会から孤立―――なんてことがありえるかもしれない。

どうしても制裁を加える、というのなら、いつもの猛反発で済むだろう、という程度に終始せず、軍事衝突などの暴発に備えてから行うべきである。短絡的な行動は命取りである、ということを今一度、頭を冷やして考え直す必要がいる。