本当は怖い家庭の医学


溜まっていた分の中から、過去症例のものを挙げときます。




・05年7月6日放送〜本当は怖い薬の飲み方SP
本当は怖い薬の飲み方・身体に合わない薬―――薬剤性劇症肝炎
急性肝炎のうち、特に肝細胞の破壊が急進し肝機能が維持できなくなり、黄疸・肝性脳症・腹水など肝不全状態が現れた場合に劇症肝炎と呼ばれている。日本では年間2000例発生、70%以上が死亡しているという、極めて予後の悪い重篤な病気である。急性肝炎の原因が、そのまま劇症肝炎の原因となるが、その多くはウィルス感染(ウィルス性急性肝炎の中では、B型肝炎が約1%と比較的多く、次いで多いのがA型肝炎。C型肝炎は極めて少ないとされる)で、それ以外に薬剤性の肝障害や肝臓の循環障害なども原因となる。
今回のケースでは、服用した薬が最も疑わしいと考えられる。患者が服用した薬の説明書には、「発疹などが出た場合は、ただちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談すること」と注意書きがあったが、患者は説明書を全く読まなかったため、サインに気づかず放っておいてしまったのだ。


>主訴
解熱鎮痛剤の服用による発疹


>病状経過
・微熱
・倦怠感
・黄疸
・異常行動


>結末
異常行動の後に倒れ、病院に搬送されるが、肝臓の提供者を見つけることができず、2週間後に死亡。


薬剤アレルギーは、薬を飲むだけで突然発症する病。つまり誰にでも起こりうること。特に花粉症や気管支ぜんそくなどアレルギー体質の方は薬剤アレルギーを発症しやすく、重篤な病に至る危険性が高くなると考えられているのである。。。




本当は怖い薬の飲み方・古い薬―――脳内出血
脳卒中のうち、脳の血管が破れて出血するのを脳内出血といい、脳出血くも膜下出血とがある。高血圧が大きく関わって発症するもので、高齢ほど起こりやすく、男性に多く見られる。
このケースでは、患者が服用した鼻炎薬、その薬に含まれる成分に問題があったのではないかと考えられている。その成分とは、PPA(塩酸フェニルプロパノールアミン)。このPPAという物質には、交感神経に働きかけ血管を収縮させる作用があり、血管が収縮すると血流が速まり、鼻の粘膜にたまっていた血が取り除かれる。その結果、鼻づまりが解消。鼻炎の症状が緩和されるのである。もちろん、用法を正しく守り使用している限り、問題はなかったはず。ところが、患者は薬の服用から脳内出血を起こす、重大な原因を抱えていた。
それが高血圧。不規則な生活により、知らずに高血圧となった患者だが、そのサインを見過ごし、PPAが含まれている鼻炎薬を服用してしまったのだ。薬のケースに「高血圧の人は使ってはいけない」という注意書きがあったことにも気づかぬまま…。そう、あの薬は高血圧の人が使うと、重大な副作用が起きる可能性があったのである。


>主訴
ぶり返すくしゃみと鼻水、鼻炎薬を服用して3日後に頭痛


>病状経過
・手の痺れ
・激しい頭痛
・半身麻痺


>結末
懸命な治療により意識を回復。一命を取り留める。


PPAの服用による脳内出血が報告されたのは、日本では7例。アメリカでは服用患者が死亡した例も確認された。こうしたかつてない事態に、2003年8月、厚生労働省は各製薬会社に対して、PPAを含む市販薬の製造中止を指導。一方、製薬会社もPPAの危険性を訴え、積極的に回収を進めた。その結果、現在販売されている薬はすべて、PPAにかわる安全な成分を含むものへと変更。事実、製造中止となって以降、PPAによる脳内出血は一度も報告されていないのである。




本当は怖い薬の飲み方・薬の飲みすぎ―――急性腎不全
腎臓の働きが低下状態にあるのを腎不全といい、急激に腎機能が低下している状態を急性腎不全、長年にわたり腎機能が低下してくる状態を慢性腎不全という。
急性腎不全は、血中の老廃物が絶え間なく増えていく状態で、乏尿(一日の尿量が3・400ml以下)や無尿(一日の尿量が100ml以下)を伴うのが普通だが、尿量の減少を伴わないタイプもある。
急性腎不全には、大きく分けて3つに分類される。


腎前性〜:腎臓への血流低下によって起こる。原因として、出血性のショック・脱水など。
腎性〜:腎臓そのものの障害によって起こる。原因として、虚血・毒物・急性腎炎など。またカルシウム、尿酸塩、異常タンパクの沈殿により、腎臓が障害されて起こる場合も。
閉塞性〜:腎臓で作られた尿は腎盂・尿管・膀胱・尿道と通過するが、その通り道が閉塞されて尿が尿道を出てこないことによる急性腎不全。前立腺肥大症などが閉塞の原因。


今回のケースでは、患者の間違った薬の飲み方にあった。たくさん飲んだ方が早く治る。そう思い込んでしまった患者は、骨粗鬆症の治療薬であるカルシウムを、指示されている倍の量服用。これがカルシウムだけなら特に問題はないのである。本来カルシウムは、体内のビタミンDの量によって制限されているため、体内に吸収されないのだ。しかし、患者は、カルシウムの吸収を助ける処方薬、活性型ビタミンD3も一緒に服用していた。
その結果、大量に摂ったカルシウムがすべて体内に吸収されてしまったのだ。こうして骨では使い切れない余分なカルシウムは、全身をかけめぐり、神経細胞を刺激。それでもなお、余分なカルシウムを服用。その余分なカルシウムによって、腎臓を破壊してしまったのだ。


>主訴
骨粗鬆症による腰痛


>病状経過
・イライラ
・浮腫み
・尿が出ない


>結末
急性腎不全による尿毒症により意識不明。その後、週3日、1日4時間におよぶ人工透析を受け、徐々に回復。