コワイガク(本当は怖い家庭の医学のウチ的略称)


・プレイバックto補足コワイガク

「(04年6月29日放送)本当は怖い頻尿」―――腰部脊柱管狭窄症
脊柱(せきちゅう)とは、いわゆる背骨の事。脊柱管は、脊椎の後部(背中側)を上下に貫いている管で、その中を脊髄が通っており、脊髄の後ろを黄靭帯が縦に走っている。腰椎の脊柱管には、「脊椎馬尾神経」という神経が入っており、ここから下肢に行く神経が分岐している。
「腰部脊柱管狭窄症」は、この脊柱管が狭くなり、様々な症状を引き起こす病。患者がこの病気を患った原因は、健康のためにと思って始めたテニスにあった。

今回のケースにおける発病までの経緯
|腰を回転させるスポーツを急に始める
|テニスの激しい動きに耐えるため、骨が大きく成長
|骨と骨を繋ぎ止める役割をしている靭帯も厚くなり、脊柱管が狭くなる
|神経の圧迫により、膀胱の収縮という命令が上手く伝わらない
|膀胱が満タンになるまでの間隔が短く、たびたび尿意を感じるようになる(頻尿)
泌尿器科に行ってしまい、病気を発見できなかった
|テニスにとどまらずジョギングまで始める
|脊柱管がさらに狭くなり、神経の束を圧迫(脹脛の痺れ・足の裏の激痛)
|サーブの瞬間、背骨を思い切り反らす
|ただでさえ圧迫されていた神経が限界に達し、強烈な痛みが走る
|さらに転倒して、腰を打ちつけたことで神経が損傷
↓自分の力では起き上がれない身体に

この病気が厄介な所は、腰そのものには痛みを感じない場合があること。そのため、泌尿器科に行ってしまい、病気を発見できなかったのだ。
50歳以上の男性の80%、女性の60%に何らかの腰の骨の異常が見つかっている。そんな人が急激にスポーツを始めると、恐ろしい結末が待っているかも知れないのだ。


「(04年6月15日放送)本当は怖い頭痛」―――緑内障
眼球の内圧が高まるために、視神経が障害され、次第に視野が欠けていく病気。
緑内障には急性のもの(眼圧の急激な上昇によって起こるもので、緑内障発作とも言われている。青そこひと呼ばれる状態になり、適切な処置をしないと2〜3日で失明)と慢性のもの(徐々に視野が欠けていくが、自覚症状はなく、最後まで視野が残る)とがある。
今回のケースでは、慢性緑内障が該当。頻繁に起こるようになった頭痛は、緑内障が原因だ
ったのだ。

今回のケースにおける発病までの経緯
|デスクワークで下を向き続けたことで房水の出口が圧迫され、狭くなっていく
|房水が溜まりすぎた結果、眼圧が上昇。目の中の組織が圧迫される
|体内の水分の上昇に伴って房水が増え、眼圧が上昇(水を大量に飲んだ後、頭が重い)
|眼圧が上昇しつづけ、眼球の裏の視神経をも圧迫。ついには神経が破壊される
|視野がどんどん欠ける
|欠けた視野を補おうと、症状の軽いほうの目を無意識に酷使
|こめかみから肩にかけての筋肉に負担がかかる(肩凝り)
|近感がつかみにくくなり、段差が測れなくなる(躓きやすい)
|視野が欠けていたために、目測を誤る(手足の言うことが聞かない)
|失明寸前まで視野が欠けていたことに気づかなかった
↓片目を失明、もう一方の目も、いずれは失明する運命に

緑内障は将来的に、両目に及ぶ。そして、その進行を止めるは出来ても、失った視野を取り戻す治療法は今のところ存在しない。それだけに、小さな症状を見逃さず、早期発見することが大事なのだ。
現在、緑内障を患っている人はおよそ400万人と推測されているが、治療しているのはわずか40万人。つまり360万人が、自覚のないままに緑内障を放置しているという。


・2月1日放送

「本当は怖い骨折」―――大腿骨頭壊死
大腿骨の骨頭部分が壊死に陥る病気の事を差し、多くは急性に起こる股関節の痛みで始まるという。中には坐骨神経痛のような痛み(尻から大腿部にかけての痛み)が起こることもあり、また、アルコール飲料の多飲が原因と考えられるものを差す「アルコール性大腿骨頭壊死」や、ステロイド剤の使用が原因と考えられるものを差す「ステロイド大腿骨頭壊死」など、同じ大腿骨頭壊死でもある程度の原因が判っているものもある。
全ての始まりは、転倒による大腿骨骨折にあった。

今回のケースにおける発病までの経緯
|転倒により大腿骨を骨折、その際、血管が切断
|適切な処理により完治。しかし、壊死の進行は判らず
|もう大丈夫と、テニスを再開
|コートを走り回ることで、彼女の股関節には普段より強い力がかかる
|壊死して脆くなっていた骨頭が陥没
|本来滑らかだった股関節の動きが、大腿骨頭の陥没でぎこちなくなる(膝の痛み)
|骨頭の陥没で股関節の動く範囲が狭まり、太腿を体に引き寄せられなくなる(爪が切れない)
|左手に重い買い物袋を持っていたため、強い力が左の股関節にかかる
|骨頭の陥没がさらに進行(股の痛み)
|重い米袋を持ち上げた瞬間、骨頭はついに破壊され、激痛
↓人工関節を埋め込み、現在リハビリ中

現在、50歳以上の女性の実に3人に1人が「骨粗鬆症」になっていると言われている。そして大腿骨頚部骨折を起こす人は、年間およそ12万人。そのうちおよそ3000人が、不幸にも大腿骨頭壊死になっているのである。


「本当は怖い難聴」―――聴神経腫瘍
内耳道や、小脳の橋角部という部位に起こる良性腫瘍を差す。50代を中心に発症するといわれ、片側に起こる難聴や耳鳴りが徐々に進行し、目眩を伴うことも多々ある。進行すると、顔面神経麻痺や三叉神経麻痺、さらに脳内亢進(腫瘍や血腫などの占拠物が発生すると、脳中の圧が高くなる状態)が起こるが、画像診断の発達により早期発見されるケースが多くなってきている。
今回の場合、MRI検査によって腫瘍が確認されたが、4センチに及ぶ大きな腫瘍から類推すると、5〜10年前に腫瘍が出来た、と考えられる。

今回のケースにおける発病までの経緯
|大きくなった腫瘍が内耳神経を圧迫(難聴)
|平衡感覚を伝える役目も持つ内耳神経が、腫瘍の為に正常に機能しなくなる(目眩)
|腫瘍はますます大きくなり、ついに内耳神経の隣にある顔面神経まで圧迫
|顔面神経の圧迫で、味覚障害が起きたり、眼の辺りがピクピクしたりする
|腫瘍の成長で、顔面神経はさらに強い圧迫を受け、顔の筋肉を操ることも出来なくなる
|顔面神経麻痺に見舞われる
↓手術により腫瘍は摘出されたが、左耳は完全に聴力を失い、顔面麻痺も残る

この病の怖さは、難聴や目眩といった初期段階の症状が、多くの場合いったん出ても治まってしまうこと。そのため、腫瘍の成長に気づくことが非常に難しいのだ。
見逃されやすく、後遺症のリスクが高い恐ろしい病。それが聴神経腫瘍―――現在、年間およそ1000人の人が、この病気を発症していると報告されている。


ネクストカルテ―――「本当は怖い花粉症SP」
2時間SPとして、花粉症について3例取り上げます。