コワイガク(本当は怖い家庭の医学のウチ的略称)

・プレイバックto補足コワイガク

今回は、虫が原因で発症した病気について取り上げます。

「(5月11日放送)本当は怖いおなかの張り」―――エキノコックス症による肝不全
患者の死因である肝不全の原因は、エキノコックスと呼ばれるサナダムシの一種に肝臓を蝕まれたためだった。元々、エキノコックスとは、北海道に棲むキタキツネに寄生する寄生虫
その寄生虫が、キタキツネ⇔鼠とのサイクルを巡って増殖。そこに犬が加わり、鼠と接触することで新たな宿主となる。皮肉にも、患者がエキノコックス症を患ったのは、愛犬が原因だった。愛犬の口のまわりについていた卵が患者の口から侵入した可能性があるのだ。

今回のケースにおけるメカニズム:肝臓に寄生したエキノコックスの卵が孵化、幼虫となり10年の歳月をかけて成長→20cmに肥大したエキノコックスが、肝臓を破壊→肝機能が徐々に低下→病巣が壊死する→肝機能停止

肝臓は別名「沈黙の臓器」と呼ばれ、強い症状を示すことは殆どない。発見した時には、既に手遅れ、という場合も少なくないのである。2000年現在、日本におけるエキノコックス症の発症例は約500件ほどといわれ、その中で、キタキツネの生息しない本州でも、77件が確認されている。

「(7月27日放送)本当は怖い虫刺され」―――慢性活動性EBウィルス感染症
日本人の90%が持っているといわれる「EBウィルス」―――血液中のリンパ球に、入り込み、特に悪さをする事無く共存しているが、ごく稀に、このEBウィルスによって異常を来たす人がいるのである。患者は幼少の頃に、この慢性活動性EBウィルス感染症を患い、よく熱を出したり、すぐ寝込んでしまうような弱い体質になってしまったのである。しかし、それ以外は特に何も起こらず症状も軽かったため、この病にかかっていることすら気づかずに成長してしまったのである。患者の、この感染症を劇症化させたのは、虫刺され、つまり蚊だったのだ。

今回のケースにおけるメカニズム:蚊の唾液に含まれる成分がEBウィルスを活性化→それに伴い、リンパ球が過剰反応→刺された個所に激しい炎症→他の些細な刺激に対しても過剰反応を起こすようになる→紫外線の刺激や足のぶつけた刺激によってリンパ球が活性化→再び蚊に刺される→免疫システムが限界に達する

蚊などの虫刺されによってEBウィルスが活性化してしまう事実がわかったのは、ほんの十数年前。現在も殆どの人が、この病の存在自体に気づいていないのが現状である。

「(8月10日放送)本当は怖い発疹」―――日本紅斑熱
リケッチアと呼ばれる病原体が体内に侵入することで起こる『日本紅斑熱』―――最悪の場合、死に至るこの病気に患者が患ったその原因は、体長2ミリのマダニに刺されたためだった。マダニは主に山間部に生息するダニの一種で、一度吸血すると、人間の身体から離れないように固定する機能を持っている、という特徴を持つ。キャンプに出かけた際、そこで草叢に潜んでいたマダニが患者を刺し、3日間もの間ずっと身体に吸着したまま吸血し続けていたのだ。

今回のケースにおけるメカニズム:マダニの体内に生息するリケッチアが体内に侵入→猛スピードで増殖→血液に乗って全身に広がり、毒素を出したり炎症等を起こしたりする

日本紅斑熱の出す熱のピークは12時間周期。今回のケースの場合、患者の熱は朝に下がっていたため、安心してしまい症状が悪化。意識不明にまで陥ってしまったのだ。しかし、二人はギリギリのところで発見されたため、治療により一命を取りとめることが出来た。
日本紅斑熱を引き起こすマダニは、温暖な草木の生えている地域に生息。20年前に発見されたばかりのこの病気は、毎年50人ほどの症例が報告されているが、それも氷山の一角に過ぎないのかも知れない…。


10月5日放送「夫婦間で気をつける病気SP」
「本当は怖い物忘れ」―――多発梗塞性痴呆
脳中の神経線維が死んでいき、最終的には重い痴呆状態に陥る病気、それが『多発梗塞性痴呆』である。様々な情報を処理し、記憶・感情・理性をコントロールする神経線維が切れたその原因は、生活習慣にあった。油物中心の食生活に、飲酒喫煙の習慣もある上、高血圧体質というこの患者―――その結果、脳の血管には徐々にコレステロールが蓄積し、動脈硬化や高血圧、ついには小規模の脳梗塞が発生、脳の一部が壊死したため、神経線維が切れてしまったのだ。

今回のケースにおけるメカニズム:神経線維が切れたことで、物忘れが起きる→動脈硬化を放置、患者の脳は小規模の脳梗塞が頻発、神経線維がズタズタに→記憶を保つことが困難になったばかりでなく、感情のコントロールも困難になる→「感情失禁」を起こす→極端な意欲低下になる→夜間譫(せん)妄を発症→脳以外にも動脈硬化が発生、血栓ができる→興奮したため血圧が急上昇し、大規模な脳梗塞が発生、意識を失う

もし感情失禁を発症した時、病院に行っていれば最悪の事態は避けられたかも知れないが、患者は病院に行こうとはしなかった。この病気は、症状が進行するほど、自分が痴呆だと認めなくなっていくのである。また、痛みなどの症状が身体に現れないのが、『多発梗塞性痴呆』の最も恐ろしい所。痴呆の原因となる小さな脳梗塞は、早ければ患者のように40代から発症する。痴呆は決して、高齢者だけを襲う悲劇ではないのである。

「本当は怖い耳鳴り」―――ストレス多血症による心筋梗塞
家庭内でのストレスが原因で、患者は心筋梗塞に見舞われ死亡。ある程度の生活習慣病を抱えていたその影で、ある病気を発症していたのだ。『ストレス多血症』―――ストレスが原因で濃縮型血液、つまりドロドロ血になり、身体に様々な障害の出る病気のこと。

今回のケースにおけるメカニズム:ストレスを受ける→交感神経が刺激を受ける→ノルアドレナリンが分泌、患者はさらなる高血圧に→血圧を元に戻すため、少しずつ水分を放出、収縮した血管の流れを緩める働きをする→濃縮型血液、つまりドロドロ血に→三半規管の血液の流れが悪くなり、結果「耳鳴り」「目眩」が起きる→血液中の水分が減り、赤血球の密度が増え、結果「赤ら顔」に→血液の流れが滞り、足の筋肉にまで酸素が行き渡らず、結果足の痺れを感じる→患者の血液は少しずつ動脈硬化を進行、その心臓の冠動脈はボロボロに→妻の小言にキレた途端、興奮したせいで交感神経が刺激、心臓の冠動脈が一気に狭まる→心臓の筋肉が壊死、患者は死亡

『ストレス多血症』は、比較的男性に多く起こり、現在40歳以上の男性の10人に1人は、ストレスによる濃縮型血液の恐れがあるという。知らずに放置すると、最悪の事態を迎える可能性がある。

「本当は怖い発疹」―――全身性エリテマトーデス
膠原病の一種として知られる『全身性エリテマトーデス』―――全身の至る所で激しい炎症が起きるこの病の患者数は全国でおよそ3万人、発症例は4千人に1人と、ごく稀に起きる病気だが、若い女性に多いこと以外は、いつ誰が発症するか判らないという。患者がこの病気を発症したきっかけは、新婚旅行先のハワイでの日焼けにあった。

今回のケースにおけるメカニズム:日焼けしたことがきっかけで、突如、免疫機能が異常を来たす→顔に発疹→体内では、異常をきたした免疫機能が自分の皮膚の細胞を攻撃→炎症と同時に、発熱や倦怠感を引き起こす物質が発生、患者はダルさや微熱に襲われる→炎症が全身の至る所で悪化、患者は無気力化する→実家の海辺で陽射しを浴びる→免疫機能の暴走に拍車→顔に蝶が羽を広げたような発疹『蝶形紅斑』を発症→ついには心臓まで達し、呼吸困難に陥る

この病が恐ろしいのは、微熱やだるさといった何気ない症状が多いため、ついつい放置してしまうこと。なぜ免疫機能が異常をきたすのか。その詳しいメカニズムは不明だが、日焼け以外にも、妊娠・出産・手術など、身体に大きな負担がかかることがきっかけになると言われている。しかし、『全身性エリテマトーデス』は薬でコントロールが可能な病気。早期発見して治療を行えば、普段どおりの生活を送ることもできるのである。


ネクストカルテ―――「本当は怖い食欲不振」「本当は怖い発疹」
発疹に関しては、別番組SPを挟んで2回連続の紹介です。

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