コワイガク(本当は怖い家庭の医学のウチ的略称)


・プレイバックto補足コワイガク

今回は、特別コラムとして2例と、過去放送分1例を紹介します。


参考資料…小学館「ホームメディカ 家庭医学館」
     時事通信社「家庭の医学」


・バージャー病
『閉塞性血栓血管炎』とも呼ばれ、アメリカの医師バージャー氏(1879〜1943)によって、1906年に報告された病気。バージャーのスペルは「Buerger」で、ビュルガーと発音されることがあるため、ビュルガー病とも呼ばれている。
四肢(手足のこと)の動脈及び静脈に炎症が起き、そこに血栓ができて血管の内腔を塞いでしまうという恐ろしい病気。20〜40代の、喫煙している男性に見られるという。
原因ははっきりと判っていないが、この病気は肉体労働者により多く発生していることから、
外力によって血管障害が起こり、さらに煙草による血管内皮(血管の最内層)の障害や、血液が固まりやすくなって、血栓ができるのではないか、と考えられている。
最近では、免疫反応異常のひとつである、自己免疫反応が関与し血管炎をもたらしていると考えられている。同様に四肢の動脈を塞ぐ病気に、『閉塞性動脈硬化症(腹部や足の血管が動脈硬化を起こし、血液が流れにくくなる病気。本当は怖い家庭の医学において、04年6月22日放送分「本当は怖い足の痺れ」で紹介)』がある。このバージャー病は、厚労省特定疾患(難病)に指定されている。


●主な症状
皮膚…血液不足状態のため蒼白になり、冷感を伴う。時間経過で血液が溜まる「うっ血状態」
になり、チアノーゼが発生。慢性化で、皮膚は赤紫色に。
筋肉…間欠性跛行(病側の足が冷たく、歩行で痛み。暫く休むと治まる)、血液不足状態が続くと、じっとしていても痛むようになる。更に進行すると、栄養障害のために、手足に潰瘍や壊死が生じる。




COPD慢性閉塞性肺疾患
気管支と細(さい)気管支、その先端にある肺胞に病変があり、気管支の病変が『慢性気管支炎』、肺胞の病変が『肺気腫』と、呼ばれているが、その両方は別の病気ではなく、同時に存在しているという。このため、欧米ではCOPDという病名で使用している。
COPDの主因として、長期にわたる喫煙が挙げられている。20〜30年にわたって喫煙していた人の、およそ10〜15%がCOPDになるとされている。肺機能は加齢と共に衰退するため、特に高齢者が問題である。日本では、これまで男性の喫煙率が高かったため、COPDの患者の大半は中年以後の男性、北米では死亡原因の4位、寝たきり原因の2位を占める重要な病気で、今後、高齢化社会・喫煙率増加により、日本でも患者数が増えると予想している。


●主な症状
咳、痰、身体を動かした後の息切れ、気管支喘息に見られる喘鳴(苦しい息をするたびに、ゼーゼーなどの音を発する)、呼吸困難。これらの症状のため、日常生活の活動が制限されることも。




(04年5月18日放送)本当は怖い咳―――心筋梗塞
冠状動脈の血流が不足している状態が強く、30分以上も続くと心臓の壁の一部の細胞が壊死してしまう症状を云い、この病気に罹って数週間を急性心筋梗塞といい、非常に死亡率が高いという恐ろしい病気。この期間が過ぎると、壊死した部分は傷跡として残り、心臓の収縮状態は元通りではないが、比較的安定している状態になる(陳旧性心筋梗塞)。
今回のケースでは、日頃から運動をし、喫煙もせず、健康が自慢だった患者が、何故心筋梗塞で命を落としたのか?それには、肺炎クラミジアが大きく関係していた。


今回のケースにおける発病までの経緯
|当時37歳の患者が肺炎クラミジアに感染
|咳き込むようになったが、免疫力が肺炎になることはなく、咳も治まる
|マクロファージに食べられた肺炎クラミジアは、ひっそりと生き続ける
|心臓を取り巻く冠状動脈では、血管壁に小さな傷ができる
|その傷口から、血液中のコレステロールが血管壁に入り込む
|肺炎クラミジアを抱えたマクロファージがコレステロールを取り除く
|しかし、コレステロールを食べ過ぎて肥大化し、ついには破裂
|血管内に脂肪のこぶを作り、血液の通り道を狭める
心筋梗塞により死亡


クラミジア肺炎とは、クラミジア性感染症クラミジアとは異なる)という微生物による肺炎の事。肺炎クラミジアには3種が知られているが、成人に肺炎を起こす重要なものはクラミジア・アシッタシ(オウム病を起こす原因となる微生物。鳥類に感染し、これらの鳥の排泄物が感想、空気中を漂い、クラミジアを含んだ塵を吸い込むことで肺炎を起こす。症状として、高熱・ダルさ・呼吸困難・出血しやすい、重症化することがあり、頭痛・筋肉痛・関節痛を伴うことがある)、クラミジア・ニューモニエ(近年発見された新種。成人の市中肺炎の数%がこれによって起こるとされている。通常、オウム病に比べて自覚症状は軽いことが多いが、他の病気を持っている人では重症となった例がある)である。

10年前に消え去ったはずの細菌。その体内で身を潜め、やがてキバを向く。患者の胸の痛みや、発汗は、心筋梗塞の前触れだったのだ。

                  • -


・3月15日放送
本当は怖い歯茎の出血―――歯肉癌
歯肉にできる癌をいい、粘膜の初期変化を口内炎と思い込んでいる人が多いという。インドなどでは、ビータル・ナット(ビンロウの葉で煙草と石灰を混ぜたものを包んだもの。歯肉と頬粘膜の間に入れる)による持続的な刺激で多発している。


今回のケースにおける発病までの経緯
|煙草のタールやニコチンで血行は悪化、直接歯肉の粘膜を刺激、アルコールも同様に刺激
|長年の喫煙飲酒による刺激で、歯肉の細胞の遺伝子が突然変異し、癌化
|歯茎にできた癌細胞が成長するために、新しい血管を作り出し、その血管が表面で出血
|癌細胞の成長に伴い、歯茎の腫れとなって現れる
|唇から歯肉に通じる神経をも冒し始め、麻痺を起こす
|癌細胞が歯茎から口を開ける筋肉にまで進行、口を開けることが出来なくなる
↓歯肉癌と診断、下顎の半分を摘出


現在、この歯肉癌に冒される患者は、年間2000人以上。50代以上の男性に多く、その数は年々増え、30年前と比べるとおよそ3倍と言われている。また、今回のケースのような生活習慣をしていると、癌ができる確率は2,5倍も増すと言われている。
幸い、転移がなかったため、一命を取り留めることが出来たが、しかし、歯肉癌を取り除くために取られた措置は、下顎の半分を摘出するというもの。歯肉癌は早期発見が難しいため、
顎の摘出にいたる患者が意外と多いのである。たかが歯槽膿漏と放っておいたことが引き起こした悲劇だった・・・。




本当は怖い腰痛―――脊椎カリエス
結核菌の感染によっておこる脊椎炎で、最近では『結核性脊椎炎』と呼ばれ、骨関節の結核では、最も見られるもの。大抵の場合は肺など他の臓器の結核病巣から、血液を通じて脊椎に感染が及ぶが、感染源が判らないものもあるという。


今回のケースにおける発病までの経緯
結核菌によって腰の骨が炎症を起こし、骨を覆う膜が刺激される(腰痛)
結核菌が腰の骨を溶かし始め、溶けた骨が神経を圧迫(足の痺れ)
|さらに骨が溶け、その部分が押しつぶされ、脊椎全体が曲がる(背が縮む)
|骨が溶け、炎症が進んだため、大量の膿が発生
|膿が腰と足の付け根をつなぐ筋肉に沿って流出
|溜まった膿がついには柔らかい足の付け根の組織を破って噴き出す
|転倒
|転んだ衝撃で、膨らんだ骨が一気に神経を圧迫、下半身が麻痺してしまう
↓検査の結果、脊椎カリエスと診断


結核菌は、不特定多数が出入りする密室で感染、現在でも毎年3万人以上の結核菌患者が生まれている。そして結核菌に感染した場合、大抵、肺で発病。咳や微熱などの初期症状を引き起こす。今回のケースで脊椎カリエスと診断された患者の場合、押しつぶされた神経を回復させることは不可能だった。そして一生下半身不随のまま、生きて行くことを余儀なくされてしまったのである。




ネクストカルテ―――「肩凝り」「生理不順」「腰痛」
夫婦のストレスが引き起こす病気2時間SPです。

                                                                                                                                                                  • -